2020年5月16日 初出

新型コロナウイルスの流行で不要不急の県外移動を控えるように呼びかける動きが当分は続きそうだ(※1)。

観光業への影響もさることながら、様々な理由で家族と離れて仕事をする人の生活設計にも影響を及ぼしそうである。

私自身は幼少期を埼玉県大宮の父の社宅で過ごしたが、社宅の老朽化と、私が小児喘息を抱えていたこともあり、小学校入学前の1995年に福島県会津若松に転居した。両親とも実家が会津ということもあったのだろう。

しかし父の会社は基本的には関東にしか事業所のない企業である。2014年に転職するまで、単身赴任や新幹線通勤が続いた。単身赴任とはいえ週に1回、少なくとも月に数回は自宅に戻っていた。

自分の家はどこ?

例えば、平日を東京のアパートで1人、休日を地方の自宅で家族と過ごすというライフスタイルの人にとって、居住地という概念は曖昧なものとなろう。

長期に亘って家族と離れて東京で過ごす、と決めているならば東京に住民票を移している可能性もあるわけだが、少なくとも週末は地方で、という人は地方に住民票がある。その場合、定額給付金の受給手続きは地方でしなくてはいけないし、地方で選挙があるならばそれにも行かなければいけない。

特に用事がないならば戻らないという選択肢もあるだろうし、戻るにあたっても勿論、感染症が蔓延している以上は感染防止対策には留意しなければならない。しかし、必要があって戻る人の権利は、保障しなければいけない。

県内で生活しているということの証明

一部施設で、他県からの来訪を抑止するため、入場する車のナンバープレートやその運転手の身分証を確認するということが行われている(※2)。以上のような複数地域に生活拠点があるケースでは、例えば単身赴任先に免許証の住所表記を書き換えているということは考えにくい。

また、車のナンバープレートは一応法令上は転居したら書き換えをしなくてはならない(※3)が、実際に書き換えるとなれば手続きが煩雑である。

これらの手続きがある。これらをこなすには時間の余裕が取れなければどうしようもなく、ワンストップで実施できるような仕組みがあればと思うこともある。

これらを考えると、来訪した人が県内に縁があるということの証明は、ナンバープレートと免許証を確認できればほぼ可能だろうが、県内で生活する人の中には、他県との二重生活などのため、県内で生活していることを証明しろと言われてもできない人も存在している。こういった人に対する権利の侵害がないようには、留意すべきと考える。このような傾向が行きすぎてしまうと、浮き草のように、拠り所のなくなる人々が出てくる。

目的と手段の混同を避けよう